クール王子はワケアリいとこ
「いえいえ、私もたまたま知っていただけですから」
 と、オルガさんは日本語だけでなく謙遜(けんそん)も上手みたいだ。


「でも、そう。薔薇……ですか……」
 そう小さく呟いたオルガさんは、チラリと皓也の方を見た。

 少し心配そうな。
 それでいてどこか面白がっているような。
 そんな表情で。


 どうしてそんな顔をするのか。
 理由も分からなかったし、わたししか見ていなかったみたいで誰も気にしていなかったから、わたしも気にしない事にした。


 とにかく、そんな風に(なご)やかに過ごしてから叔父さん夫婦は皓也を残して帰って行った。



 それから入学までの数日間一緒に過ごして分かったけれど……。

 皓也は確実にわたしを()けている。


 松葉とは一緒に楽しそうにゲームをしたりお風呂に入ったりしているのに、わたしとはほとんど顔を合わせないようにしている。
 たまに合わせても、すぐに目を逸らす。

 両親の前では不自然に見えない程度は言葉を交わしてくれるけど、二人きりみたいな状態になると「ああ」とか「うん」とかしか口にしない。


 わたし何かした!?
 わたしの何が気に入らないの!?


 悲しいのか怒りたいのか、よく分からない感情でその数日を過ごした。

 でも新年度が始まり、皓也が入学してきてしばらくすると納得いく答えが見つかった。


 それは皓也は女嫌いって事!


 皓也が避けているのはわたしだけじゃ無くて、女子全員だった。

 男子には普通に接してる。
 でも女子にはわたしと同じ様に素っ気ない態度しかとらないらしい。

 一度皓也と一年生の女子が一緒にいる所を見た事があるけれど、本当にニコリともせず、一定の距離を空けて素っ気ない様子だった。


 わたしは呆れると同時に、正直ホッとした。
 わたしの事を避けるのは女嫌いだからで、わたしの事が特別嫌いだからってわけじゃ無かった事に安心したんだ。



 でも、そんな皓也でも見た目は良いせいか、素っ気ない態度もクールだと言われていつの間にかクール王子なんて言われる様になっていた。


 そんなクール王子と同居してるなんてバレたら周りがうるさくなりそう。
 だからこのままバレずに三ヶ月が終わればいいな、と考えていた。



 でも、四月も三週目に入ったころ。
 変化は訪れた。
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