クール王子はワケアリいとこ
翌朝は目が覚めると同時にため息が出た。
もう考えるのはやめよう。
そう思って眠ったのに、頭は考えるのをやめてくれない。
そのせいでちゃんと眠れた気がしない。
着替えてリビングダイニングに行くと、また皓也を探す様に部屋を見まわしそうになって顔を顰める。
幸い松葉には見られなかったからまたからかわれることは無かったけど。
今日は部活があるから淳先輩に話を聞けると思う。
だから昨日みたいに無駄に安藤先生を探し回る必要はない。
とはいえ気になる事は気になる。
たくさん聞きたい事はあるけれど、一番聞きたいのは皓也の様子だ。
学校に来ていないんだから、まだ元には戻れていないんだろう。
それは予測できるけど、それ以外が全く分からない。
元気にしているんだろうか。
ご飯、ちゃんと食べれてるんだろうか。
何か、ひどい目にあってないだろうか。
そうやって心配事を考えているとふと気づく。
……これじゃあわたし、母親みたいじゃない。
ご飯の心配までしてるなんてホント母親だ。
自分に呆れてため息をついた。
そして何とはなしに教室の窓の外に目をやる。
校庭にはジャージ姿の生徒が集まっていた。
何となくそれを見続けていると。
「皓也くんはいないんじゃ無い?」
「……」
何だか最近聞いたような言葉だ。
わたしはうろんな目で優香を見た。
「……別に探して無いんだけど」
「そう? でもそうび、二年になってから校庭にジャージ姿見つけると絶対に見てるじゃない。皓也くんのこと探してるんだと思ってたよ」
「………………」
正直、驚いた。
二年になってからって言うなら確実に皓也を探してたって事だろう。
それ以外にジャージ姿の人を見る理由は無い。
家でだけじゃなくて学校でも皓也を探してたとは。
自覚が無かったからなおさら衝撃だった。
「探してたつもりは、無かったんだけど……」
言い訳の様に言ってはみたけれど、本当にただの言い訳にしかならない。
そんなつもりは無くても、探してたのは明白だったから。
そうしてショックを受けているわたしを見て、優香は仕方ないな、と困り笑顔でため息をついた。
「もうぶっちゃけ聞くけど、そうびは皓也くんのことどう思ってるの?」
「え?」
「嫌いでは無いよね? 皓也くん見つけたときのそうび、少し笑顔になってるもん」
「っ!!?」
それこそ衝撃だった。
あ、いた。って見つけたときは思っても、笑顔なんてしてた覚えは無いから。