クール王子はワケアリいとこ
「どっちかっていうと好きだよね?」
「っっっ!!」

 ハッキリ言われてもはや言葉が出ない。


 どう対応すれば良いのか分からなくて目を見開いたまま固まる。
 内心は凄くテンパってた。

 そんなわたしに優香は続ける。


「問題は、その"好き"がどういう"好き"なのかよ」
「どういう"好き"?」

「身内としての好きなのか、友達の様な好きなのか……異性としての好きなのか、よ」
「……」


 それについては、多分答えは出ている。
 ただ、それを明白にしたくないだけ。


 神妙な顔で黙り込んだわたしに、優香はまたしても仕方ないなという様にため息をついた。

「言いたくないってことかな?」
「っ! ごめん、でも」
 友達なのに言えないなんて、嫌な気分にさせてしまったかと思い謝る。

 でも優香は目の前に手のひらを見せて「いいの」とわたしの言葉を止めた。

「無理に聞き出したいわけじゃないから良いよ。それに、見てれば何となく分かるし」
「……」


 それは、バレバレってことだよね……?


 言っても言わなくても同じなんじゃ、と思わなくはないけど、強引に聞き出そうとしない優香にこっそり感謝した。



 そんなやり取りもありつつ放課後になり、優香はいつもの様に部活に飛んで行った。

 わたしもいつもより早く準備して家庭科室に向かう。


 早すぎたのか部員はまだ数人しかいなかったし、肝心(かんじん)の淳先輩もいなかった。
 まあ、いたとしても部活中は話を聞くわけにはいかないけれど。


 だからいつもの席で羊毛フェルトを始める。
 この二個目も大体形が出来てきた。

 そろそろ表情を決めたいと思うんだけど、この作品が犬なせいかどうしても皓也を思い出してしまう。

 別れ(ぎわ)の心配そうな、心細そうな目が脳裏(のうり)をよぎる。
 そうなると皓也のことが心配になって、針を刺す手が止まった。

 そんな風に集中出来ずに今日の部活は終わり、すぐに帰ろうとする淳先輩を捕まえるためわたしも急いで片付けをする。


「淳先輩!」

 急いでいる様な淳先輩を何とか捕まえられたのは昇降口で靴を履き替えているときだった。


「ああ、そうびちゃん。わりぃ、急いでるんだ」
 そう言って駆け出そうとする淳先輩に、わたしは慌てて声を上げた。

「まっ! 皓也の事ーー」
 聞きたいんです、とは続けられなかった。

 目に止まらない速さで、淳先輩が近くに来てわたしの口を塞いでいたから。
< 43 / 60 >

この作品をシェア

pagetop