クール王子はワケアリいとこ
「ねえ皓也、早く帰ろう?」

 皓也の袖を軽く引いて注意をこっちに向ける。
 そして今度は自分の指をさっき皓也が触れたところに当てた。


「ここに、キスしてくれるんでしょう?」

「っ! そうび、お前……。自分から誘うとかっ……」

 何やら耳を赤くして悶絶(もんぜつ)した皓也は、はぁ~と深く息を吐くとわたしの手を取った。


「早く帰ろう」

 そう言って手を引き、外に出る。

 少し歩いてから軽く振り返った皓也がニッと笑う。


「早く帰って、俺を誘ったこと後悔させてやるから」
「っ!」

 すでに恥ずかしさで後悔し始めていたけれど、最早撤回(てっかい)なんて出来なさそうだ。


 そんなわたしの反応を見て、皓也は「可愛い」と目を細めて笑った。

 皓也からの可愛いは特別だ。

 誰に言われても素直に喜べなくなったその言葉も、皓也の口から出てるってだけで特別に嬉しい言葉になる。


 まだ耳の赤い皓也の背中を見ながら思う。


 カッコよくて、優しくて。
 でもたまにちょっと意地悪で。

 ヴァンパイアなのに狼に変身してモフモフになっちゃったり。


 そして誰よりもわたしを求めてくれている人。

 だからわたしも素直に皓也を求められる。


 大好きな、わたしの大切な人。



 クール王子と呼ばれる彼は、ちょっとワケアリなわたしのいとこで――。




 わたしの、恋人――。




END
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