さようなら、愛しい人
「かなり早いけど、構わないか……」

俺は頬を赤く染め、指輪を購入する。クリスマスにプロポーズをして同棲を始めよう。そして二人きりで式を挙げて夫婦になれれば……。そんなことを考えていた。

今日も殺しの依頼がある。俺は小さな箱を見つめながらポケットの中にあるリボルバーを握り締めた。

その日の夜、俺はいつものように殺し屋の格好をして人気のない場所へターゲットを誘導し、引き金を引いた。乾いた音と共にターゲットの体が崩れ落ちる。雪の降り始めた道に赤い血が流れ落ちていった。

「これで始末完了だな……」

早く帰ろうと俺はくるりとターゲットに背を向ける。明日はサラと演劇を観に行く約束だ。とても楽しみにしている。

しかし歩き始めてすぐ、俺はピタリと足を止めてしまった。なんと目の前にコートを着たサラが立っている。

「あなた、殺し屋?」

そう呟くサラの声にいつもの元気さはない。顔も青白い。人殺しの瞬間を見てしまったからか?俺は内心焦りながらサラを見ていた。
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