さようなら、愛しい人
俺はサラの渡した金を受け取り、冷たく言った。それでもサラは嬉しそうに微笑み、「ありがとうございます」と頭を下げてくる。

いつもの依頼のようにサラを殺そう。この苦しみから解き放ってあげよう。

そう俺は決意したんだ。サラの幸せのために……。



そして今、俺はサラにリボルバーを向けている。撃鉄を起こし、指を引き金に。でも何故か人差し指が小さく震えている。一体何故なんだろう?いつもと同じようにと思っていたのに……。

「私、本当に幸せだった……」

サラがポツリと呟く。

「小さい頃から憧れていた警察官になれて、友達もたくさんできて、そして初めて心から愛する人に出会えた。心が温かくなって、幸せで泣きそうになるの。……私を殺してくれてありがとう、シャンソン」

優しい目を向けるサラに俺は驚く。気が付けば俺は仮面を外し、サラを見つめていた。

「いつから俺が殺し屋だって気付いてたんだ?」

サラは戸惑う俺の問いに優しく答える。
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