明日が見えたなら  山吹色

  翌朝8時過ぎに会社へ電話した。予想通り沢田主任が出てくれてホッとする。

「おはようございます、神崎です。今日は体調悪いので休みます」

「熱があるの?」

「あの……ゥ……あの…赤ちゃん…流産して」

「えっ………わかった… わかったわ。辛かったわね、神崎さん一週間有給で休みなさい。それで一週間後にまた連絡してね、 身体大事にしてね」

「すみません」

9時前にお義母さんが来てくれタクシーで病院へ向かった。憔悴した私を労ってくれる。

病院へ着き、別室へ通された。先生を待つ間に来院した本当の理由を話した。お義母さんも言葉を無くし、私の背中をさすってくれる。その優しさがまた心に響く。

印鑑は2種類持って来た。説明を受け書類を記入した。帰宅できるのは夕方になる予定でお義母さんに帰るよう勧めた。

「一人で帰れますから」と言ったら、

「それはダメ!迎えに来るわ」と言われ頷いた。

処置室に呼ばれるまで、付き添っていてくれた。

麻酔から目覚めて ”無 ”を感じていた。

部屋には今、流行りの曲が流れている。

この曲を聞くたびに思い出すだろう……

お義母さんが迎えに来てくれて、タクシーで帰宅する。

「七海さんしばらく家に泊まらない?彰汰も一緒に泊まればいいし、せめて週末だけでも、どうかしら?」

「ありがとうございます。でもマンションへ帰ります。我が儘言ってすみません」

「そう?家ならいつ来てくれても良いからね」

「ご飯は食べれそう?良ければ作るわよ」

「すみません、彰くんには食べてきて貰います、私はまだ…」

「それならフルーツ持って来たから、食べられたら食べてね」

 タクシーがマンションに着く。お義母さんも降りようとするが「ここで大丈夫です。今日はありがとうございました。これタクシー代です」

「いいのよ、それは閉まっておきなさい。本当に部屋まで一緒に行かなくて大丈夫なの?今は辛いけど取り敢えず身体休めてね 」

タクシーを降りて深くお辞儀をした。
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