明日が見えたなら  山吹色

自宅に帰り、彰くんへ連絡をした。

《今 マンションに帰って来ました。お義母さんに泊まらないか?聞かれたけど断りました。折角聞いてくれたのに断ってごめんね 、夕食だけど彰くん食べて来て下さい》

《了解 欲しいものあるか?》

《ヨーグルトとアイスが欲しい》

部屋に入って布団に潜る。

辛くて辛くて…辛い。

「生みたかった 会いたかった
会いたかったよー」

声を出して泣いた。いくら泣いても悲しみは溢れてくる。

 どのくらいたったのか?彰くんが帰宅した。

「ただいま」客間を開けて入って来た。

「おかえりなさい」

「処置したって、子宮内膜症か?」

「うん」私嘘つきだね。

「先生、なんて?」

「大丈夫だって」

「そうか、ヨーグルトとアイス買ってきた。食べるか」

「あとで頂くね 、ごめんね」

嘘つきでごめんね。彰くんの子、生んであげられなくてごめんね。

「ゆっくり休めよ」

「うん、ありがとう」

部屋を出て行った。声が聞こえる。

‘’お義母さんと電話しているのかな?流産バレるかな?慌てていないから子宮内膜症と考えているのだろうな‘’

しばらくして、また彰くんが来た。

「七海?なんで客間なんだ?寝室へ行かないか?」

「布団の方が腰にいいかな?と思って」

ほんとは彰くんに泣いているのがバレないようにするため、でもそんな事言えない。

「そうか」

「………」

「何か食べるか?ヨーグルトとアイスどっちが良い?」

「アイスがいい」

「今、持ってくるよ」

アイスを持ってくると私を抱き起こして、一口一口食べさせてくれた。もう泣きそうになる。

食べ終わり洗面所へ行くが、彰くんはずっとついて世話をやいてくれた。

布団に入いると彰くんのケータイの着信音がなる。穏やかな時間の終わりの合図だった。

「行って!行って!早く出て行ってー!」

「どうしたんだ!」

「早く行ってよ、ケータイに出ればいいでしょ!」

着信音に敏感に反応してしまった。
今日は冷静でいられなかった。まだ誰かと繋がっているの?

なんでこんな時まで……手加減なしに突き落とされる気がした。

泣いて泣いて、泣いて止まらなかった。

< 16 / 41 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop