明日が見えたなら  山吹色

 木曜日には和田からケータイにメッセージが届いた。

《こんにちは!パソコンは気に入ってるよ。いろいろ話したいから空いてる日に食事に行こうよ!》

《こんにちは、パソコン気に入って貰えて良かった。二人では行けないからまたみんなと一緒の時に話しを聞くよ》

《了解》


「ただいま」

帰宅すると七海が帰宅した気配はあるが姿が見えない。テーブルの上にはテイクアウトのお弁当が置いてある。

「ただいま、七海?いる?」

「 ごめんね、ちょっと体調悪いから客間で寝てるの。お弁当買って来たから良かったら食べてね 」

普段は使っていない部屋から声がした。

「風邪か?開けるぞ」

‘’昨日も体調悪かったしな‘’
客間に布団を引いて寝ている。
‘’なんで寝室のベッドでないんだ?‘’
 七海の側まで行くが布団に隠れて顔がよく見えない。

「ちょっとだるくて横になってる。
 あの彰くん?明日って会社休めないかな?せめて午前中だけでも」

「明日は無理だな、会議が入っているし。病院か?」

「そう、産婦人科へ行くつもり」

「母さんに一緒に行けるか聞いてみようか?」

「聞いてもらえると助かる。出来たら9時半に家を出る予定なの」

「わかった 」
‘’ 付き添いが必要な程体調が悪いのか?‘’
 七海は以前子宮内膜症を患っていたので、また子宮内膜症だと思った。急いで実家へ電話した。

『神崎です』

『母さん?彰汰だけど明日は空いている?』

『どうして?』

『七海が体調崩してさ、病院へ付き添って欲しいんだ。オレ明日は休めなくて、母さんに頼めないかな?』

『大丈夫よ、七海さんどうしたの?』

『産婦人科へ行くらしいから内膜症かな? 明日は9時に迎えに来てくれる?9時半に出発するから』

『9時ね、わかったわ。七海さんへお大事にと伝えてね』

『ありがとう、頼むよ。じゃあおやすみ』


「 母さん行ってくれて迎えに来るってさ『お大事に』って。 七海?何か欲しいものないか?」

七海を覗き込もうとするが、なんだか拒否られている気がする。

「飲み物もあるから大丈夫、もう休む ね」

「電気はどうする?」

「消して貰っていい?」

「あぁ」

「おやすみなさい」

「おやすみ」

 体調が悪い時に無理強いには出来ないので、部屋から出た。

 寝る前にも七海の様子を見に行ったが、寝ているようだった。

 この時七海は辛い想いをしていたのにオレは全く気付かなかった。
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