明日が見えたなら 山吹色
目が覚めると七海が腕の中にいた。
七海の顔が目の前に有り、七海の目元は腫れていた。
「おはよう」のキスをする。
「何か食べれるか?」
「お義母さんがくれたフルーツがあるから、それとヨーグルトにしようかな」
「テーブルで食べるか?それとも運ぼうか?」
「テーブルへ行くよ」
「無理するなよ」
「うん」
‘’七海が少しでも食べられてよかった ‘’
オレは冷凍ご飯をレンジで温め、インスタントのお味噌汁と生卵にした。
食べ終わり、七海には家事はさせられないので客間の布団で休ませる。
片付けが終わり洗濯物も干してから客間へ入る。
「彰くん、どうしたの?」
「七海の側に居るよ」
「私は一人でも大丈夫だよ?どうしたの?優しいね」
「いつもだろ?」
「そう?ありがと。ねぇ買い物へ行って来てよ?」
「買い物?」
七海はオレと居るのがイヤなのか?そうだとしたら、オレはどうすればいい?
「彰くんの昼食と夕食と明日の分。 好きなパンとかさ」
「七海は何かリクエストないの?」
「うどんがいいかな?コンビニかカップラーメンのでもいいよ」
「わかった、行ってくるよ」
ケータイと鍵と財布を持ち家を出る。
ケータイの電源を入れれば和田からの着信メッセージが入っていた。
《4人くらい集まるから金曜日来てね 場所は決まったら連絡するね》
おいおい、オレは断ったのにどうしてメンバーに入っているんだよ。ここでまた返信すれば泥沼にはまるだろう。瑛に相談するか…… 渡辺だったら一刀両断だな。
パン屋へ行き、プチパンと惣菜パンを買う。
コンビニで弁当と 七海が食べれそうなうどんを選ぶ。プリンが目に入った、買おうかと思ったが、ふっと以前冷蔵庫に入っていたプリンアラモードを思い出し、駅前のケーキ屋へ買いに行った。
あれっ?あの時結局食べたかな?食べてないか?
帰宅すると七海がリビングにいてテレビを見ていたが、また泣いていた?
昼食には惣菜パンを食べる。七海はほんの少ししか口にしない。身体大丈夫か心配になる。
それから七海はリビングのソファーで過ごす。何時もなら手芸を始める七海だが、相当体調が悪いんだな。
15時になり、プリンアラモードを出した。
七海は目を見開いて驚いている。喜ぶものと思っていたが違ったようだ。
涙が次々と溢れ出した。言葉無く泣いている。
「どうした!」咄嗟に七海を抱き締める。
「ご… めん … な …さい ごめん……なさい」と繰り返しながら涙を流す。
「七海?本当にどうしたんた?話してくれないか?」
首を横に振りながら謝ることを止めない、オレは七海を抱き締め頭にキスを落とす事しか出来なかった。
七海は落ち着いて来ると、シャワーを浴びに行った。
プリンアラモードをじっと見つめた。何があるんだ?いくら見つめても糸口は見つからなかった。
シャワーから出てくる気配がしている。急いでプリンアラモードを冷蔵庫へしまう。
「彰くん、待たせてごめんね。さっきのプリンアラモード食べよ」
「えっ!」さっきの態度と随分違う。何か吹っ切れたのだろうか?
七海は冷蔵庫から取り出している。
「オレがやるよ」
「大丈夫だよ」
「飲み物は何にする?オレはコーヒーにするけど七海は?」
「私は牛乳にする」
準備が整い2人で席につく。
「彰くん 、買って来てくれてありがとう いただきます」
‘’なんだかきつねに摘ままれた気分だ‘’
‘’美味しいはずなのに味がわからない‘’
七海は一口一口味わう様に食べていた。
「七海?こんな時に悪いが明日休日出勤しても大丈夫か?」
誰かに代わってもらいたかったが他に都合のつく人が居なかった。
「大丈夫だよ」
「母さんに来てもらうか?」
「ううん 、一人で平気」
七海が寝室のベッドで眠る。今まで普通だった事がとても嬉しく感じる。腕の中の七海がしっくりくる。