私は彼とあくまでも友達になりたい
プロローグ

『切れるとは、鋭く賢いことを言う。』

確か包丁のコマーシャルの言葉だったと思う。

私は『弥生彰人(やよいあきと)』を初めて見たとき、すれ違ったとき、その言葉を思い出さずにはいられなかった。

高校一年生の春だった。

鋭く整った面立ち。
吸い込まれそうな濃紺色の瞳。
黒の様な紺の様な曖昧な髪色。
そして、他人を寄せ付けない繊細な雰囲気がかえって人を惹きつける魅力になっている、そう思わせる様な人物だった。

彼を例えるなら、そう、"ナイフ"がしっくりくる。

特に何があったというわけではないが、ただ漠然と『仲良くなりたい』と思った。

それが私、『西窪梨花(にしくぼりか)』の、弥生くんに対する"第一印象"だった。
< 1 / 251 >

この作品をシェア

pagetop