私は彼とあくまでも友達になりたい
side 吉本颯太

「なぁ、颯太。話があるんだ。」

かつての親友、弥生彰人に試合の後言われた言葉だ。
今更なんなんだよ、と少し思ったのも事実だが、俺からも彰人に謝りたいことがたくさんあったのも事実だった。だから、彰人の誘いにのった。

俺らは一階の共同スペースに移動する。辺りには誰もいなかった。

「…俺さ。」

先に口を開いたのは彰人だった。

「俺、お前に謝りたいことがあってさ。
…あのときはごめんな。颯太。
俺は何もしていないけど、俺という存在がお前を傷つけたのは事実だ。だから、ごめん。」

彰人は頭を下げた。頭を下げる彰人なんて俺は初めて見た。

「…なぁ、顔あげてくれよ。俺らは対等な関係だろ?
俺だって悪かったんだ。女一つで俺もカッとなりすぎたし、それに、彰人の話、ちゃんと聞こうとしなかった。彰人以上に俺に非があったよ。あの話は。」

だから、ごめん。俺も謝った。
すると彰人は顔をあげて、

「…俺さ、初めて好きな人ができたんだよ。
それで、あの時、颯太の気持ちが理解できた。
好きな人が、他の男子と話してるだけで嫉妬する。」

と言った。彰人は俺のことをすごく気にしていてくれたみたいだ。

「なぁ、もうこの話はやめようぜ。
…まだ俺らは親友。それだけでいいじゃねぇか。」

彰人は、ふふっと笑って、

「そうだな。積もる話はこれから先もできるもんな。」

と言った。
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