私は彼とあくまでも友達になりたい
弥生くんと私は英和辞書を抱えて、四階までの階段を上がる。

「なあ、これ、視聴覚室に持ってくんだよな?」

「あ、うん、そうだよ。」

そんな会話を交わした。
部活終了のチャイムが鳴ったといえど、校舎内には、生徒がちらほらといる。私と弥生くんが一緒に歩いてるのを見て、ヒソヒソ話している子もいた。

やっぱり、私が弥生くんと歩いてるのって違和感しかないんだろうなぁ。とぼんやり、弓道部の先輩のことを思い出しながら思った。

そう考えると、何故だかわからないけど、急に今の状況が場違いな気がした。

「…ねえ、弥生くん。」

「何?」

階段を上る足を止め、弥生くんは振り返る。

「あのね、申し訳ないんだけど、先持っていっててくれないかな?私は後で行くから。」

と言い、英和辞書を階段の途中に置いて、そそくさとその場を去った。
自分でも自分が何しているのかよくわからなかった。

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