私は彼とあくまでも友達になりたい
***

弥生くんとの帰り道。

私はやっぱりまた、ドキドキしてた。

私も弥生くんもバス通学だから、バス停まで一緒に歩く。

その間、少しまた喋った。

「ねえ、弥生くんはさ、中学どこだったの?」

「ん?ああ。長濱中だよ。そう言う西窪は?」

「私は長濱北だよ。意外と近いね。」

そんな他愛のない会話にもドキドキした。バス停についてもなおその胸の高鳴りは止まらない。

「ね、ねぇ、球技大会自信ある?」

会話を続けようと私は必死。球技大会は六月の第一水曜日に行われる予定の、高校生になってから初の大きなイベントだ。

「まぁ、そこそこには?」

弥生くんはそう言った。

そこそこって…それ、意外と自信ありってこと?

そう言おうとした時、私が乗る予定のバスが来た。

私は勇気を出して、弥生くんに手を振りながらバスに乗りこむ。

「じゃ、じゃあ、ね?」

弥生くんに振り向いて言う。
その瞬間バスの扉が閉まった。

弥生くんは手を振りかえしてくれているのが窓越しに見える。
弥生くんの口の形が、『あ、あ、え』と動いた。多分、『じゃあね』と言ってくれたのだろう。


バスの中、吊り輪を掴んでぼんやり考える。

弥生くんと今日いろいろ話したけど…。
私はまだ、弥生くんのことを友達だとは思ってはいけないのだろうなぁ。

それは、弥生くんがこの間、もっと私のことを知りたいと言っていたし、私も彼のことをもっと知りたいと思っているから。

だから、私と弥生くんはまだ友達にはなれてないんだろうな。
次の委員会もがんばろ。
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