私は彼とあくまでも友達になりたい
彰人くんがペンを置き、私の肩を叩いたのは、チャイムが鳴る二分前だった。

私は手を動かしながら、なーに?と聞く。

「せっかくだし、手の冷たさ比べとかもどう?勝った方は、今書いてるやつ10個追加って条件付きで。」

私はその彰人くんの言葉に、いいね、と頷く。
チラリと彰人くんの紙を見たとき、私よりも多い印象を受けたから。

私もペンを置き、右手を出す。
私は末端冷え性だから、きっと勝てる。

彰人くんが私の右手に左手を重ねる。

彰人くんの左手は暖かかった。

──やった、勝った!

そう思った瞬間だった。

私の右手の指に彰人くんの指が絡み付いたのだ。
いわゆる恋人繋ぎ状態。

「ひっかかってくれてありがと。」

彰人くんは言う。意地悪な笑顔で。
もう!また私をからかう!

照れ隠しをしながらも、シャーペンを手に取ろうとした瞬間気づく。

あれ?私、右手彰人くんと繋いでるから…。

バッと横を見ると、彰人くんは左手で私の手を繋ぎ、右手でシャーペンを動かしていた。

ひっかかってくれてありがと、ってそういうこと!?

「彰人くん!離してよー!」

私は右手を離そうとするけど離れない。
それは強い力で握られてるせいか。それとも…

「だーめ。それに、離したいなら、もっと本気で離そうとすればいいじゃんか。そうしないってことは、梨花も手、繋ぎたいってことでしょ?」

彰人くんは変わらずニヤリと笑って言う。

焦ってる間に、チャイムは鳴る。

多分、今日の勝負、私はボロ負けだ。

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