私は彼とあくまでも友達になりたい
ペンギンショーが始まる時間になるころには、どこも彰人くんの言うようにがらんとしていた。

私たちは、クラゲやクリオネなど、小さめの生き物がいっぱいいるコーナーに着いた。
少し薄暗い。

私は辺りに誰も居ないことをいいことに、彰人くんに後ろから抱きついてみた。

もちろん照れさせようという魂胆もあったが、彰人くんに抱きつきたいと思ったのだ。
その理由はわからないけど。

彰人くん、照れてるかな?

「…俺が後ろから抱きつくのはいいとして、梨花が俺に後ろから抱きつくのってどうなの?」

彰人くんは笑ってそう言った。
たしかに、やった後に少し変かなと思ったのも事実。

そのことが恥ずかしくて、私は回していた手をほどく。

なんか、ごめんね。

そう言おうとしたのだが…

「梨花。ハグっていうのはね…」

彰人くんはそう言い、私のことを右腕で引き寄せた。そして左手を腰のあたりに回す。

「こう、するんだよ。」

耳元に彰人くんの息がかかる。くすぐったい。

照れさせるつもりが私が照れてしまう。
彰人くん!少しくらい手加減してよ!
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