私は彼とあくまでも友達になりたい
「ううん。別に大丈夫。」
「そう?」
私たちがそんな会話をした時、
「ごめん梨花、待たせて。中で冷やかされてた。」
彰人くんは息を切らして出てきた。
「おい彼氏ー、もっと急げよなー。」
「うっせぇ。」
笑って、男子に返事をする彰人くんを見て、私はいつぞやの千夏の言葉を思い出す。
『弥生くんは、クラスメイトにも、無気力に接している。』
たしか、初めての委員会だった日の帰り、千夏はそう言っていたはずだ。
それに、球技大会の日彰人くんは1人で行動してたよね…?
今はそんな風にはとてもじゃないけど見えない。
ポカンとしてる私に、ひなちゃんはそっと耳打ちをする。
「彰人くんね。梨花ちゃんと付き合ってるって噂され出してから、クラスでの親交が一気に深まったの。近寄りがたい存在だと思っていた人が、普通の高校生だって気づいたみたい。」
なるほど。
なら、この冷やかしも感慨深いものに感じる。
彰人くんは、
「ほら、梨花。帰ろ?」
と手を差し伸べる。
私はその手をぎゅっと繋ぎながら、うん!と言った。
帰る時、後ろからは、
「バイバーイ!」
というひなちゃんの声が聞こえた。