私は彼とあくまでも友達になりたい
二年生
4月。
春休みを終え、始業式。
一年生ほどのワクワク感はないが、クラス替えのドキドキは大きかった。

「やっほー!梨花ー!」

後ろから千夏に呼ばれる。

「おはよー!」

私も千夏に満面の笑みを見せる。

「今年は、梨花と一緒のクラスになれるといいなぁ。」

「ほんとにね。」

私たちは笑い合う。

「…あのさぁ、一つ言っていい?」

「いいよ?」

親友は明るい声だが、なんだか、無理してるように聞こえた。
親友は立ち止まり深呼吸をして、

「私もね。彰人くんのこと好きだったんだ。」

と言う。

──その言葉を理解するのに私は少しの時間が必要だった。

私の言葉を待たずに、千夏は続ける。

「今更だって思われるかもしれないけど、好きだったことをこのまま、梨花に隠しとくのは辛くて。だから、言わないべきだと思ってたんだけど、言うことにしたの。」

「ごめんね。それこそ新しい生活が始まる日なのに。」千夏は謝る。
千夏は泣きそうな顔をしていた。励ますのが正解かと思ったが、私の口は、勝手に動く。

「…私こそごめん。辛かったよね。デートのこととか相談しちゃったりしてさ。」

「うん、正直ちょっとは…。」

「そっか、やっぱりそうだよね。ごめん。」

私も泣きそうになる。私は親友になんてことをしてしまっていたのだろう。
私が泣くのもなかなか変な話だと思う。だって千夏の方が辛かったんだから。

「でもね、親友と好きな人を天秤にかけるなんて、私には無理だった。だから、二人と私を天秤にかけた。どう考えても、二人の方が勝っちゃうの。だからさ、私の分まで幸せになってよね!じゃないと、絶好だから!」

親友は、無理矢理作ったであろう笑顔で、私に声をかける。

だから、私も無理矢理笑顔を作って、「うん!」と力強く頷いた。
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