私は彼とあくまでも友達になりたい
「…だから、ここのmustは『〜に違いない』。
じゃあ、この問いは?」
「…えっと、『彼はエリックに違いない。』ってことか。」
「そう。あとちょっとだから、頑張れよ。」
弥生くんはそう言ってくれたけど…。
「疲れたぁ…。何か食べたい。」
「…おいおい、ここ図書室だぞ?」
確かに。何か食べたり飲んだりするのは外の方がいいよね。と思い、やっぱりいいやと言おうとしたが、弥生くんは
「…まあ、いいか。」
と言って、カバンからミントガムを取り出して、食べた。
「ほら、西窪も。」
差し出されたミントガム。私の好きなやつだった。
私はそれを受け取ろうとしたのだが…。
「…やっぱやーめた。」
弥生くんは、ヒョイっとミントガムを持つ手を上にあげた。
「えー、なんでー?」
それを取ろうと私も負けじと手を上げるのだが届かない。
「そうだなー。」
弥生くんは何かを考える。その顔は意地悪な笑顔だった。
「『ちょーだい』って言ったらいいよ?」
またまた意地悪な笑顔でそう言う弥生くん。
なんだそんなことか。
確かに脳ではそう思っている。そのはずなのに、どうしても心がそれを言うのを躊躇ってしまう。どうして?
「ちょ、ちょーだい?」
頑張って言ったが、声は掠れた。
「うーん、聞こえないなー。」
弥生くんは、また意地悪を言う。
「ちょー、だい?」
さっきよりは聞こえる声で、でも声は掠れていた。
何故だか顔も熱い。
「…聞こえないけど、可愛いからいっか。」
弥生くんはそんなことを言いミントガムを差し出す。
「…私可愛くないよ?」
ミントガムを受け取りながら、そう言った。
こんな平々凡々女のどこに可愛げがあるというのだろうか。
あっ!そっか!私をからかってるのね!
「まぁ、西窪はそう思ってればいいんじゃない?」
弥生くんはため息を吐きながらそう言った。
…どういうこと?
そう思ったのも事実。だけど、ミントガムを口に入れる悪いことをしてるってことは分かっているんだけど…。
「美味しいね。」
「なんか、悪いことしてるっていう気持ちがより美味しくしてる気がするな。」
そんな会話を交わした。
弥生くんってちょっと意地悪だけど、それも悪くないって思うの。