私は彼とあくまでも友達になりたい
***

本の修理はそんなに難しくなく、そんなに量もなかったので、図書委員全員集まって作業すると、一人8冊くらいの修理で終わった。

「弥生くんは今から部活?」

私は聞いた。

「うん。でも、もうすぐ終わる時間だから、もう帰ってもいいかな。」

弥生くんはそう言った。

「じゃあ…。」

「うん、今日も一緒に帰ろ?」

私は弥生くんと帰る帰り道が大好きだった。

図書室の扉を潜ろうとすると、司書の先生に、ちょっと、と、呼び止められた。

「二人って、付き合ってるの?
この間、二人で花火見てるとこ、私見ちゃったんだけど。」

ニヤニヤしながら、私たちに話しかける司書の先生。
私はキッパリと、

「付き合ってませんよ。それに、弥生くんは好きな人がいるんですから。」

と言った。
ね、弥生くん。
まあ、私は弥生くんのことが好きだからその事実にちょっとやきもきしちゃったりするんだけど。
ま、恋は諦めちゃ終わりだもんね。ねーちゃんも言ってたけど。

弥生くんは、私に同調するように、まぁ、好きな人はいますね、と言った。が、

「でも、西窪と花火見れて嬉しくないわけがないって思ってますよ。」

弥生くんはこちらを見て言った。

「え!?弥生くん。それってどういう…。」

ドキドキしながら私は聞く。すると弥生くんは、

「ま、冗談ですけどね。」

と言った。

「え!?」

な、なんだ。冗談か。
本気で焦っちゃったよ。
多分照れてるよ、私…。

「もう!おどかさないでよね。弥生くん。」

「ごめんごめん。つい西窪見てたらからかいたくなってさ。」

そんな私たち二人を見て、司書の先生はハハーンと笑い、

「ま、気をつけて帰りなよ。」

と言った。

それを聞いたのを機に、私たちは図書室を出た。
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