私は彼とあくまでも友達になりたい
弥生くんと一緒の帰り道。

コンクリートは陽炎が揺らめいていたし、アブラゼミの声はジリジリと少しうるさかった。夏だと嫌でも感じられた。

「なあ、西窪。ちょっと遠回りして帰らない?」

弥生くんはそう言った。
暑かったから早く帰りたいと思ったのも事実だけど、それ以上に、弥生くんと一緒にいられることに強く惹かれた。

「いいよ。長濱市、ぶらぶらしようか。」

私はそう言った。

「とりあえず、自販機で飲み物買わね?喉乾いた。」

「いいけど、なんで自販機?コンビニで良くない?」

私は思ったことを口にした。

「別にそれでもいいけど、自販機の方が探すの大変な分西窪と一緒にいられるじゃん?」

弥生くんは笑いながらそう言った。

「そっか。それもそうだね。」

こうして私達は、自動販売機を探し始めた。
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