私は彼とあくまでも友達になりたい
***

side弥生彰人

西窪がトイレに行ったのを機に、俺は、恋愛小説を読む手を止めて、後夜祭に西窪を誘えた喜びを噛み締める。

これで文化祭当日も一緒に周れたなら、どんなによかったか。
でも、それも叶わぬ願いだ。

…にしても、幼馴染、『花園(はなぞの)ここな』に「文化祭そっち行くから、一緒に周ろ?」と言われたときは、驚いた。
流石に無下にするわけにはいかないかと思い、その誘いに応じた。

西窪は、誰と周るんだろ?男じゃなきゃいいけど…。

そんなことを考えていると、西窪が帰ってきた。

「…弥生くん?もしかしてぼーっとしてた?」

そう声をかけられる。

「あぁ、うん。ちょっと考え事。」

「何考えてたの?」

笑顔で聞く西窪。
俺もニヤリとして、

「…好きな人のこととか?」

いつも通り、からかう口調で言った。
君のこと考えてたなんて言えるわけない。

「そっか…。」

そう言う西窪の顔は笑顔だったが切なさが滲み出ていた。
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