私は彼とあくまでも友達になりたい
***

やっぱり胸の痛みとモヤモヤを抱えたまま、映画撮影に追われる毎日は過ぎていく。

そんなある日のことだった。
クライマックスを撮ろうというところで、今撮ってる映画の主役をしてる同じクラスの福井くんに呼び出された。
私の中で、福井くんは、明るくて元気な人っていうイメージだ。友達は『爽やか』って言ってた。

「福井くん、どうしたの?」

私は自転車置き場のあたりまで連れてこられた。
辺りに人はいない。どうしたんだろ?

「…ずっと前から西窪のこと気になってた。
…付き合ってくれないか?」

…福井くんはそう言った。
その言葉と声は普段の福井くんからは想像できないほど真っ直ぐで真剣なものだった。

…そうやって冷静に分析している私もいるが、私にとっては、告白というものが初めての経験であるため、顔が多分真っ赤だ。

「えっと…あの…。」

私はつっかえながら返答を考えた。

…付き合う?

いやいや、中途半端な気持ちで付き合うのは失礼だよね。

…考えさせてください?

いや、どうせ私の答えはこうやって思考を巡らせているけど、もう決まっている。

ごめんなさい、だ。
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