私は彼とあくまでも友達になりたい
まあ、ほぼ知らない人にじっと見られたら、何?ってなるよね。
自分の行動を冷静に見つめ返し、「何でもないよ」と言おうとした。
…が、私はそれを飲み込み、
「いや、綺麗な横顔してるなって。」
と言った。
本人に向かって何言ってんだと少し思ったけど、そんなことはもうお構いなしだ。
少しでも会話して仲良くなりたかった。
「…ありがとう?」
弥生くんは私の言葉に首を傾げながら応える。
…ダメじゃんかー。私のバカ。
弥生くんのこと困らせてどうする。
「あ、えっと、そうだ。弥生くんって何部に入るかもう決めてるの?」
私は、気まずい空気を変えるべく、頑張って話題を捻り出した。
普段、人と話す時はもっと気軽に話しかけられるのに、何故だか弥生くんの前ではうまくそれができない。
「うーん。バレー部…かな?」
ありがたいことに、弥生くんは私が必死に作った話題に乗ってくれた。
にしても、弥生くんが、バレー部、か。
「へえ、意外。弥生くん、文化部のイメージだった。まあ、運動できるイメージもあるけど。」
言った後に自分でも少し失礼だったかな?と思う。
私は思ってることをついつい口に出してしまうのが悪い癖だとわかっているんだけど、なかなかやめられない。
「そういう、西窪は?」
と弥生くん。
先程教えたばかりの名前を覚えてくれていた。
…少し嬉しいと思ってしまう。
「うーん、そうだなぁ。中学の頃は吹奏楽部だったけど…。」
人並みにしかできなかったがそれは内緒だ。
「あぁ、なんか、ぽいわ。」
弥生くんはそう言って、目を細めて笑った。
…初めて見る、彼の表情だった。