私は彼とあくまでも友達になりたい
「そうそう。
…やればできるじゃん。」

弥生くんに英語を教えてもらい始めて、早20分が経過していた。
私は何とか長文を一題訳すことができた。
難易度的に考えて、全然早くないんだけど、弥生くんはそうやって褒めてくれた。

「ありがとう。弥生くん、教えてくれて。」

「…いいよ、べつに。」

私が笑顔で言うと、弥生くんも笑顔でそう言った。
何故だか恥ずかしくて目を背けそうになるが、私はあえて、そんな弥生くんのことを真っ直ぐ見つめながら、

「…ねぇ、私ね、弥生くんと友達になりたいんだ。」

ダメ元で聞いてみた。
心臓の音がよく聞こえた。
笑顔を絶やさない弥生くんは、


「…うーん、まだダメかな。」


と首を傾げて言った。
結果は悲しいもので、私は落胆する。
私はさっき『ダメ元で聞いた』と言ったけど、だいぶ嬉しい返事を期待してた。

…なんか悔しいなぁ。

「…じゃあ、いつになったらいいの?」

私はそう返す。

「いつって…。
俺、もっと西窪のこと知りたいし。
それからでもいいじゃん?友だちになるのは。」

…よくわからないことを言われた。

どういうこと?

そう聞こうとしたそのとき、下校時間のチャイムが鳴った。

弥生くんは、リュックを背負いながら立ち上がり、扉まで歩いて行く。私は、待って、と言おうとしたが、弥生くんの方が早く口を開いた。


「俺と友達になりたいんでしょ?
なれるかなぁ…?
なれるといいね、西窪梨花さん。」


そう振り向きざまにニヤリと笑って、出て行ってしまった。

…なんだったんだろう。
言われなくても、友だちになるのを諦めるはずがない。

でも、それ以上に、心臓がずっとドキドキしていることの方が私は気になった。

どうしちゃったんだろ?私。
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