あなたの左手、 私の右手。
きっとわかってくれる。
きっとまだ大丈夫。
きっと・・・

そんな自己暗示をしている時、彼女は寂しい思いをしていた。
俺が話をまともに聞く時間も作らず、たまに二人で過ごしていても、頭の中では仕事の事ばかり考えて、早く一人前になりたいことしか考えていなかった。

長年一緒にいた彼女にはそんな俺の考えも心の中もお見通しだっただろうと思う。



もしも俺がちゃんと彼女に背を向けずに向き合っていたら今違う未来があったかもしれないと思うこともある。

彼女は幸せだったのだろうかとも思う。


一生わからない答えを求めてがむしゃらになっていた時期を脱することができたのも、赤名との出会いがあったからだと思っている。
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