あなたの左手、 私の右手。
毛布を抱えてエレベーターに戻る。

「赤名、中に社長の奥さんがいた。今意識がなくて出血もかなりしている状態らしい。社長がエレベーターの中で直接レスキューを呼んだ。1階に待機していた救急車から、隊員が上がってくる。お客様用のエレベーターを使って上がってくるから誘導できるか?」
「はい!」
毛布を置いて、すぐに私は走り出す。

脱ぎ捨てたヒールはそのままで、裸足のままエレベーターに向かう。

企画執行部のフロアを抜けてイベントフロアに出ると、かなり騒々しい状況だった。
みな45階から自分の足で階段をおりて下に向かうことに対して非難の声をあげている。
目の間にエレベーターがあるのに、使えないことへのいら立ちも多きいようだ。

主任が声を荒げているお客様に対応しているのを横目に見ながら私はエレベーターの前に立った。

深呼吸をして、自分の体の震えをとめようとする。
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