あなたの左手、 私の右手。
「季里、戻ろうか。立ったままもよくない。」
社長は優しい表情で奥さんの腰に手をまわし、奥さんを見つめた。

「そうね。赤名さん、ありがとうございました。」
「いえ、またいらしてください。」
「ありがとう」
私が頭を下げると、奥様は微笑んでから社長にエスコートされてエレベーターに乗りこんだ。

「明日、大丈夫そうだな。」
「どうでしょうか・・・」
「あれだけスムーズにご案内できるんだ。大丈夫だろ。」
「・・・」
「飯、食ったのか?」
「まだです。」
「早く飯食え。午後からはまた忙しいんだから。」
「はい」
「この仕事は体力勝負だからな。ちゃんと飯は食え。」
「はい」
「ほら」
そう言って先輩は私の手に何かを渡してきた。
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