あなたの左手、 私の右手。

「赤名さんでしたっけ。黒谷さんと一緒に組むのは大変でしょう。」
私の隣には女性の社員が座ってくれた。
「前に黒谷さんと一緒に組んでいた人は、体育会系の人だったけで、今回は全く違ったタイプの子犬系女子なんだもん。かわいくて仕方ないでしょうね。黒谷さん。」
「・・・そうですかね・・・？」
私は極度の緊張であまりうまく言葉を返せない。

「佐々木、あんまり新人をいじめるなよ？」
すかさず先輩が私たちの話に口をはさむ。
「佐々木は元は【ASAKAWA】の社員だったんだ。それが企画で呼んだ企業にほれ込んでこっちに単身移住したっていう変わりもん。」
「変わりもんって言わないでよ。黒谷さん、かなりかわいがってるんじゃないんですか？じゃなきゃ、とっさに顔見知りの私の席を交換させるなんて。」
ふっと笑う佐々木さんと先輩を交互に見る。
そういうことか。

先輩は私と隣同志に座れなかったから、知り合いの佐々木さんに席を交換してもらったんだ。