翠玉の監察医 癒えない時間
「よく頑張ったね。辛かったね。もう大丈夫だから、泣いてもいいよ」

星夜の温もりは、突然命を奪われた駆流や藍子のものと似ている。普通ではない自分を二人は愛してくれた。

「……ッ!」

蘭の目の前がぼやけ、涙がこぼれ始める。それは蘭が初めて流した涙だった。星夜は優しく蘭を抱き締め続け、「大丈夫だよ」と繰り返す。

家族を失って悲しいはずなのに、蘭の胸は何故か温かかった。それが一体何故なのか、蘭にはわからない。

「星夜、お前は何をしに来たんだ。そんな化け物を抱き締めて何がしたいんだ!!」

突然響いた低い声に蘭は泣くのをやめる。義彦たち三国家の人間が蘭と星夜を睨み付けていた。

「あんたはもううちの人間じゃないはずよ。私たちに会うことも許されない」

晴子がそう言い、他の人たちも「そうだ」と頷く。星夜はそんな三国家の人たちを睨み付け、蘭を抱き上げて言った。

「別にお前らに会いに来たわけじゃない!俺はただ蘭ちゃんのことが心配になって来ただけだ!」
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