翠玉の監察医 癒えない時間
たまに星夜が休みの時には、蘭は星夜に頼んで射撃場や格闘技の稽古場に連れて行ってもらった。星夜をもう駆流たちのように失いたくない。そのために蘭は強くなろうと思ったのだ。

格闘技や射撃を蘭は一度教わっただけでマスターし、蘭の腕を見込んだたまたま居合わせた軍隊の人に訓練に参加させてもらうこともあった。

「蘭、今日も特訓に行くの?」

「はい。強くなりたいのです」

無表情のまま答える欄を、星夜は心配げな目で見つめる。気が付けば蘭がアメリカで暮らし始めて半年が経っていた。しかし、蘭が出かけるのは学校と射撃場、そして格闘技の稽古場くらいだ。

蘭のクラスメートとなった女子高生たちは、みんなおしゃれなカフェに行ったり、遊園地や映画館に出かけたりする。しかし、蘭は星夜と遊びに出かけることはなかった。遊びに出かけたのは、日本で過ごす最後の日だけだ。

「ここ、いい景色でしょ。蘭に見せたかったんだ。これからアメリカでの生活だから……」
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