翠玉の監察医 癒えない時間
「私は、星夜さんと同じ道を歩いて星夜さんを支えていきたいのです。星夜さんの隣にいる時だけ、私の胸はこんなにも揺れ動くのです。この気持ちが何か、一体何という名前なのか、それはわかりませんが……。私は、星夜さんと離れたくないのです」

その時、ザアッと音を立てて風が吹く。するとふわりと二人の間を白い花びらが舞った。日本で駆流や藍子とよく見た桜の花だ。星夜がたくさんの花を咲かせる木を見て言う。

「綺麗でしょ?ここ、桜の絶景スポットなんだって」

「とても、美しいです」

散っていく花びらを蘭は黙って見つめる。人の命のように桜は儚い花だ。命を突然奪われた駆流と藍子を見て蘭はそう思った。しかし、この花が美しいことに変わりはない。

この花をここで何度も二人で見られるようにと蘭は願い、星夜と同じ道を進むために努力を続ける。そして高校を卒業した蘭は、星夜と同じ医大に入学することができたのだ。



「今日からここに蘭も通うんだな……」

「はい。ここで法医学を学びます」
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