翠玉の監察医 癒えない時間
ヘンリがそう言い、テキストとまた向き合う。立派な監察医になるために勉強は欠かせない。

「私も、もっと頑張らなくては……」

蘭は胸元を掴む。星夜が医大を卒業し、監察医として働き始めたからだ。星夜の横に監察医として立てるようになりたい。そう思うと勉強はちっとも苦ではなかった。

星夜と一緒に家で過ごし、医大に通い、アーサーたちと時々話し、武術の鍛錬をし、勉強をするーーー。そんな毎日を送っていたある日、蘭が医大の教室に入ると、アーシャが嬉しそうに首につけたネックレスに触れていた。

「アーシャ、おはようございます」

蘭が挨拶をすると、アーシャは「おはよう!ねえ見てみて!」とネックレスを蘭に見せる。光の当たり方によって青や白の煌めきを放つ不思議な石がついている。

「これ、ムーンストーンっていう宝石なの。彼氏がプレゼントしてくれて。石言葉は「愛を伝える」「円満」なんですって!自分で言うのもアレだけどロマンチックだなぁって」
< 26 / 46 >

この作品をシェア

pagetop