翠玉の監察医 癒えない時間
頬を赤く染めながら話すアーシャに、蘭は「素敵なネックレスですね。よく似合っています」と返す。すると両手を優しく包まれた。

「蘭にも、きっと素敵な宝石をプレゼントしてくれる人が現れるわ!だってとっても蘭は綺麗だもの」

無邪気に笑うアーシャに対し、蘭は「そんな人はいません」と淡々と返す。そして何もなかったかのように椅子に座った。

その様子を星夜が見ていたなど、蘭は知らない。



時は進み、いよいよ蘭たちも監察医になるための試験を受ける日が近づいてきた。これで合格すれば蘭は念願の監察医として働ける。

「蘭ならできるよ。だって努力し続けているから」

監察医の仕事内容を話しながら星夜が言う。蘭は「星夜さんと一緒に働けたらとても嬉しいです」と言った。そして勉強するためにテキストを見始めるのだが、その手が何故か小刻みに震え始める。

「蘭、緊張してる?」

星夜に訊かれ、蘭は「わかりません」と返す。心の中にある人としての感情が蘭には分からないことが多い。そのため、この感情が緊張なのだと初めて知った。
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