翠玉の監察医　癒えない時間
「リラックスできるように音楽でもかけようか」

星夜はそう言い、スマホを操作する。流れてきた音楽に蘭は耳を傾ける。音楽もまともに聴いたことのない蘭にとって、その音は星夜の声を聞いた時のように心に染み込んでいった。

「この曲はね、ビートルズっていう音楽グループのレット・イット・ビーって言う歌なんだ。この音楽に何度も俺は救われたんだよ。監察医になるための試験の時にもね」

そう星夜は微笑み、蘭の頭に優しく手を置く。そして音楽に合わせて歌い始めた。優しい声に蘭の口も歌を口ずさむ。

「Let it be，Let it be」

二人の歌声が小さく響く。そして緊張がほぐれた蘭は監察医になるための試験に合格することができた。合格したのは蘭だけではない。アーシャやアーサーたちもだ。

「全員で無事に合格することができました」

蘭がそう星夜に言った時、星夜は「おめでとう！本当によかった」と蘭を抱き締めてくれた。その体温に蘭の胸がギュッと締まる。
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