翠玉の監察医 癒えない時間
「ひどい……」

アーシャは泣き続け、ミンホとヘンリも体を震わせていた。蘭は「きっともう大丈夫です」とアーシャたちに言う。

「先ほど、警察のサイレンの音が聞こえました。緊急事態ですし特殊部隊がすぐに突入してくると思います。私たちはそれまで隠れて安全を確保し、助けを待ちましょう」

蘭がそう言い、ヘンリが「蘭がいなかったら俺たちは今頃死んでいたな」と言う。蘭は「もう、誰も失いたくないのです」と駆流と藍子の顔を思い浮かべながら言った。

蘭たちは廊下を歩いていた。この廊下の先には会議室がある。そこに鍵をかけて閉じこもろう。そう話していたのだ。

その刹那、蘭たちの背後にライフルを手にした男が四人現れる。蘭が戦闘態勢を取ると、「挟まれた!」とミンホが真っ青な顔をした。蘭が後ろを見ると、会議室の方にもライフルを手にした男が四人いて、蘭たちは挟み撃ちにされていたのだ。

蘭一人では、アーシャたちを守りながら戦うことはできない。しかし抵抗の意思がないことを示したところで、この男たちが引き金を引くのはわかっている。
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