翠玉の監察医 癒えない時間
胸に広がっていくこの感情の名前を、蘭は理解する。これが憎しみというものなのだと。

ライフルを構えたまま、男が一人近づいてくるのが気配でわかった。蘭の胸に良心はなかった。ただ、この三人や他の監察医の命を奪ったこの男たちが許せなかった。

男が近づいてきた刹那、蘭は護身用に隠していたナイフを取り出す。そして顔を上げて男の喉元を一瞬でかき切った。

男からは血が吹き出し、蘭の体には返り血が飛ぶ。白い白衣は所々に赤い模様をつけた。

男たちは慌ててライフルを構える。蘭は動じることもなく一瞬で殺した男のライフルを構え、相手が撃つ前に引き金を引いた。蘭の放った銃弾は急所に当たり、男たちの命を奪っていく。

蘭は荒い息を吐きながら歩いていく。男たちはまだ大勢いるだろう。そして、この建物のどこかに星夜がいる。星夜を助けなければならない。

蘭が廊下を歩いているとチャキ、と銃を構える音がした。この窓の外に多くの男たちが銃を手にしているのだ。蘭は拳を握り締める。
< 40 / 46 >

この作品をシェア

pagetop