翠玉の監察医 癒えない時間
蘭はよく二人に抱き締められ、そう言われた。そのたびに蘭は「……うん」と頷いた。すると二人から「いい子!」と頭を撫でられ、蘭は微笑むのだ。

蘭は、他の同い年の子どもに比べると変わった子どもだった。あまり話さず、あれがほしいこれがほしいと駄々をこねることもなく、駆流や藍子が集めている本をまるで絵本を読むかのように手にとって眺めていた。

そんな変わった子どもだったが、蘭の両親はいつも穏やかに笑って蘭を育ててくれた。蘭は二人から愛情を受けて育っていた。

「蘭、何を描いてるんだ?」

ある日、蘭が絵を描いていると駆流に話しかけられた。蘭はスケッチブックを見せる。すると駆流の顔が驚きに満ちた。

「藍子!ちょっと見てくれ!」

「何?駆流くん」

駆流と同じように藍子もスケッチブックを見る。そして、「これって……」と駆流と同じように驚く。そんな二人を見て蘭は首を傾げていた。

蘭が描いていたのは、駆流の持っている解剖に関する図鑑にあった内臓や骨の絵だった。
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