子作り契約結婚なのに、エリート社長から夜ごと愛し尽くされました
「代わりに……」

バッグミラー越しに、ニヤリとする柊也さん。おなじみの、あのわっるい笑みに嫌な予感しかしない。思わず視線を逸らした。
こちらから、下手に聞くことはしない方がいい。それは身をもって学習している。

「紬に気持ちよくしてもらおうかなあ」

「なっ……」

8ヶ月ともなれば、夜の生活はなにもない。雅也の時同様に、赤ちゃんに悪影響があるといけないからって、禁欲生活中だ。それが、ここにきてまさかねぇ……

「なに?紬ちゃん。エロいこと想像しちゃった?」

「い、いえ。そんなことは……」

思わず敬語になってしまうぐらいには狼狽える私に、くっくっくと笑いを漏らす柊也さん。一体なにを企んでいるのか、怖すぎるんだけど。

「どうやって気持ちよくしてもらおうかなあ」

ああ……イケメンの頭の中は、絶対に覗くべからず。見たら最後、なにを強要されることやら。

「紬がどこまで頑張ってくれるかだな。なあ、紬」

チラッと送ってくる視線が、色気たっぷりなのは気付かなかったことにしておこう。ていうか、頑張るってなによ。

「雅也をちゃっちゃっと寝かしつければ、時間はたっぷりあるしな。なあ、紬」

会話の最後に、いちいち同意を求めるのはやめていただきたい。もうここは貝のように押し黙るしかない。

「聞いてるのか、紬」

「は、はい」

絶対に私の反応を見て楽しんでるな。意地悪すぎる。



< 240 / 250 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop