子作り契約結婚なのに、エリート社長から夜ごと愛し尽くされました
「おっ、美味そうなにおいだな」

「ひゃあ」

突然肩に顎を乗せられて、おまけに耳元で呟かれて、危うく手にしていたお玉を落とすところだった。

「危ないじゃないですか!!」

「ああ、わるいわるい」

大して悪びれた様子もない軽い謝罪に、イラッとしたのは言うまでもない。

「も、もうすぐできますから、あっちで待っててください」

「へいへい」

そう言いながらも、一向にこの場を離れる様子はない。
人に見られていると思うだけで、無駄に緊張しちゃうんだけど。


「紬」

「なんですか?」

「味見してやる」

そう言って指さしたのは、さっき出来上がって運ばれるのを待つのみの唐揚げ。
もう揚げちゃったんだし、多少味がまずかろうと、あとは塩コショウか、はたまたレモンで誤魔化すしかないのに。
とは思いつつ、爪楊枝を刺して渡してしまう。


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