子作り契約結婚なのに、エリート社長から夜ごと愛し尽くされました
お風呂を済ませて、ついでに掃除もしておいたから、けっこう時間がかかってしまった。
柊也さんは、もう寝てるのかもしれない。

すでに体の関係があるとはいえ、一緒のベッドに寝るのはどうにも緊張してしまう。

今晩はするのかしないのか……
さっきの話だと、しないはずだよね……?
っていうか本来それを決定する権利は、私にもあるはずじゃないかだろうか?

基礎体温計とカレンダー、ペンを用意しながら、そわそわした気持ちで寝室へ向かう。
そうそう。寝室には卓上カレンダーを置くことにした。そこにできない日を書き込んでおけば、生理日を申告するなんて小っ恥ずかしい手間が省けると思うから。


柊也さんが寝ていることも考えて、控えめにノックをする。

「んー」

中から返事らしきものが聞こえて、そっとドアを開けてみた。柊也さんは、ベッドの上で何か雑誌を読んでいたようだ。
パッと見、おそらく仕事絡みのものと思われる。

「紬さあ」

雑誌から視線を上げて、ジロっとこちらを見てくる。

「夫婦の寝室なんだから、ノックなんていらないぞ。この家で暮らす上で配慮は大事だけど、遠慮は一切いらない」

なんだろう……
柊也さんの表情からしたら、そんなこと当然で考えるまでもないっていう雰囲気が伝わってくる。
これまで仕事で数回会っただけの私を、ここまで信頼してくれることを疑問に思うと同時に、たまらなく嬉しく思ってしまった。

「ありがとう」

「ん」


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