プラチナー1st-



業後、和久田が紗子の席まで鞄を持ってやって来た。

「松下、行こう」

そうやって堂々と主任の前で約束の話をしないでくれないかな。案の定、主任からは、

「なんだ、松下。今日は和久田と何処か行くのか」

と誤解されてしまった。いや、誤解じゃないんだけど、和久田くんとの間柄を誤解されたくない。

「はあ、まあ、なんでか付き合えって言われてしまって…。まあ、一回くらい良いかなと思ったんで…」

そう言うと、和久田が驚いて否定した。

「何言ってんの。俺は今日だけで済ますつもりないぞ」

だから、そういうこと主任の前で言わないでくれないかな。

……って、えっ?

「…なに? 今日以外にも付き合わなきゃいけないの?」

「だって、浜嶋主任とは何度も飲みに行ってるんだろ? じゃあ俺と行ったって良いじゃん」

良いじゃんって……。ぽかんと口が開いてしまうのを、主任が笑った。

「おいおい、熱烈だなあ」

主任の冷やかしを即座に否定する。

「違います!」

しかし、紗子の言葉に和久田の真剣な言葉が被さった。

「違いませんね」

……、…えっ?

< 13 / 48 >

この作品をシェア

pagetop