プラチナー1st-
「……すみませんでした……」
項垂れて、紗子は言った。このひと言には色々込められている。まず、酔っ払って前後不覚になって和久田の世話になったこと。そして、居酒屋で酔っ払いの相手をしてくれたこと。それから、路上で泣き出した紗子を受け止めてくれたこと。
昨日一日でとんでもない失態を繰り返した。それを全部和久田が受け止めて後処理をして、今、和久田の部屋で和久田がコンビニで買ってきてくれたヨーグルトを食べている。和久田はコーヒーメーカーで淹れたコーヒーだ。
「気にしてないよ。そりゃあ、片恋の人のデートの現場に居合わせたら辛いよな」
そう言ってまたやさしい瞳を向けてくる。…本当に和久田くんは人が良い。
「……もっと罵ってくれていいのよ。流石に大人として駄目な振る舞いだわ……」
学生ならまだしも、社会人になってこんなに羽目を外すとは思ってなかった。
「それだけ本気だったってことだろ」
和久田がコーヒーを啜ってそう言った。そりゃあ、何時だって恋愛には本気だったけど、何処かで諦めのような気持ちも持っていた筈だ。まさか振り向いてもらえるなんて思ってたわけではないし。
それでもあの時零れてしまった涙は嘘じゃないから、やさしくし続けてもらった、これがしっぺ返しなのかなと思う。浜嶋のやさしさに慣れてしまっていた。
「……和久田くんはやさしすぎるわ。私のこと好きっていうだけで、そこまで思えるもの?」
紗子が問うと、和久田はやっぱりやさしく紗子を見つめる。