プラチナー1st-
「そりゃあ、振り向いてくれたら一番だけどさ。でも、松下が一生懸命恋してるのもかわいいもんな。浜嶋主任の前できゃっきゃしてるお前、案外悪くないよ」
……自分だったらそこまで許容できない。和久田の懐の深さに頭が下がる思いだ。
「まあ、なんにせよ、好きになったやつが笑ってて、泣かなければ一番かな」
それを、俺がしてやれればもっと良いけど。
和久田が紗子のことを微笑って見つめると、そう言った。
どきん。
あれ、今、心臓が跳ねる音がした。意識すると、何処からともなく鼓動の音がどっきどっきと聞こえてくる。やけにうるさいと思ったら、耳の奥から聞こえてきている。えっ、これ私の心臓の音? そう思うくらい、大きな音。紗子は知らず、両手を左胸に当てていた。どくんどくん。ブラウスの中で、心臓が跳ねている。その様子を、和久田がおかしそうに見た。
「なに、急に。今更失恋で胸が痛みだした?」
目の前の笑みに。光の粉がきらきらと舞うようだった。
確かにカーテンが開け放たれていて、太陽の光は入ってきているけど、今さっきまでそんな風には見えなかった。紗子は自分の視界の劇的な変化に戸惑った。