プラチナー1st-
ところがその日、和久田は紗子の前に姿を現さなかった。ほっとする反面、どうしたんだろうと思う。まあ、一日くらい会わない日もあったけど、あの時カーディガンを和久田の家に置いてきてしまったので、その話をしたかったのに。
まあ、今は和久田と合わせる顔がないので、会わなければ会わないで構わないけど。終業時間になって、紗子はほう、と息をついた。そこへポンと肩を叩かれて驚いた。…主任だった。
「……あ、……びっくりしました。なんですか?」
「今日は元気がないな。どうした?」
主任の目にもそう映るのか。だとしたら、余計に和久田に合わせる顔はない。
「す、すみません……。ちょっと、考え事をしてて……」
「なんだなんだ。今の仕事は順調だったんじゃないのか」
そう言われて、改めて今日一日和久田のことが頭から離れなかったことを思い知る。
「すみません……」
項垂れると、主任が気を利かせてくれた。
「よし、週頭だけど、気分替えに飲みに行くか」
本当に面倒見のいい主任だと思う。紗子は浜嶋の言葉に甘えてしまった。