プラチナー1st-
会社を出て新宿まで移動する。駅前には商業施設も立ち並んでいて、交差点は人でごった返していた。何時もの店に行くんだなと思いながら浜嶋に続いて駅構内を歩いていると、硝子張りのカフェの前を通りかかった。何時もだったら気にせずに通り過ぎるところだったが、今日は一瞬足が止まってしまった。
……和久田が居る。涌沢と一緒だ。二人で仲良さそうにメニューを覗き込んでいて、明らかにデートだと分かる。
さあっと、頭から血の気が引いた。視界が急に暗くなっておぼつかない。どきんどきんと心臓が鳴る。和久田の家で鳴った音とは違う、音。胸がぎゅうっと痛い。息が細くなる。
紗子は無意識に右手で左胸のブラウスを握りしめて視線を足元に向けた。その様子に気付いた浜嶋が眉間に皴を寄せる。
「気分でも悪いか」
震える小さな声で大丈夫ですと言ったけど、浜嶋は信じてくれなくて肩を抱き寄せられた。そのまま守られるようにして構内を連れて歩かれた。……二人とも、無言だった……。