プラチナー1st-
無言で電車に乗って、浜嶋に家まで送ってもらった。大丈夫と言っても浜嶋は聞かなかった。
「ご迷惑かけてすみませんでした……」
玄関先で謝る紗子に、気にするなと浜嶋は言った。
「具合が悪い時に無理するもんじゃない。明日は体調悪ければ休むように」
「はい……」
浜嶋が階段を下りて行ったのを見ると、紗子は家の中に入ってベッドに突っ伏した。ベッドのスプリングに紗子の身体が跳ねる。
『好意を持たれる方が心地良いから』
確かにそう言ってた。和久田くんも、そう思ったのかな。紗子が振り向かないから、告白してくれた涌沢さんと付き合うことにしたのかな。あんなにかわいい子に想いを寄せられたら悪い気はしないだろうし、涌沢さんと和久田くんだったら美男美女で周りは納得するだろう。少なくとも紗子と付き合うより何十倍も納得してくれそうだ。
……泣くもんか。
明日会ったら、おめでとうって言おう。そして、ありがとうって言おう。
今更ながら気づいたこの気持ちの持って行き場はないけれど、確かに和久田がくれた気持ちだから、それに対してのお礼は言いたい。
……泣くもんか。
紗子はぎゅっと目を閉じた。目に力を入れすぎて、瞼の裏に涙が滲んだ。