プラチナー1st-
ますますしんとした空間になる。

メールに添付するデザイン画を見目よく整えてファイルに入れると、メールの文章を入力する。メールの体裁が整ったところでぎしっと椅子が軋む音がして、紗子は名前を呼ばれた。

「松下。そろそろ終わったか」

パソコンから顔を上げて部屋の奥を見ると、そこには浜嶋主任が座って紗子の仕事ぶりを見ていた。

「あ、はい。もう後はメールを送ったら終わりです」

「送ったら資料チェックしてやるから、OKだったら、これで上がるぞ」

「はい」

月曜の会議には浜嶋主任も参加する。事前に見てやると言ってくれているのだ。ありがたい。

メールを送信すると、直ぐに浜嶋がパソコンを操作する。主任は暫く画面を見つめたかと思うと、不意に右手の親指を立てて、紗子にOKのサインを出してくれた。やっと仕事が終わって、肩の力が抜けた。

「はあー……」

「はは、お疲れさん」

浜嶋主任は笑って席を立つと、紗子の席まで来てくれた。そして紗子の肩をぽん、と叩く。

「これで来週に滑り出しが順調になるよ。ありがとう」

「いえ…。仕事ですし」

でも、浜嶋主任の助力になれたのなら、紗子としては嬉しいばかりだ。微笑んで紗子を見つめてくる視線に笑んで返す。最後にぽん、と主任の手が右肩に乗り、さあ、帰るぞ、と促された。

鞄を取り出してスマホを入れると、お弁当箱をサブバックにしまう。浜嶋主任も鞄を持ってパーティションのところで立っていた。一緒に出てくれるらしい。

「お疲れ様です」

「おう、お疲れ」

並んで歩くのもおこがましいので、一歩あとをついて歩く。浜嶋主任が上機嫌に、ちょっと飲んでいくか、と紗子を誘ってくれた。嬉しいので、はい、と躊躇いなく応えてしまう。

「ははは、笠原に遅くなるなって言われてなかったか、お前」

「あっ、言われてますね。でも主任相手なら、大丈夫です」

本当のことなのでそう言うと、そういうもんか、と浜嶋主任は笑った。
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