生まれ変わってもまた、何度でも恋をはじめよう。
色づく世界、一筋の光
*
死んだ魚のような目って、
そんな例え方は変だと思っていたんだけれど、
あれはどうやら、的確な例えだったんだと気付いた。
だって、鏡に映る私の瞳は、
まさに「死んだ魚のような目」だったから。
高校に入学した時に、入学祝で
お父さんに買ってもらった鏡は、
何度も落としたせいで傷がついてしまっている。
そんなみっともない鏡に自分を映すと、
なんだか老けて見えるし、
嫌なところばかりに目がいってしまう。
こんなはずじゃなかったのに、
と嘆いてしまうのが嫌で、
最近はその鏡に自ら傷を足してしまう癖がついた。
床頭台に鏡を置いて、
窓の傍まで歩いて外を覗くと、
下の方に桜の木が見える。
桜の季節が今年もやってきた。
季節は自分が望まなくても、
当たり前にやってくるものだけど、
私はあと何回、
桜を見ることが出来るのだろうか。
「……早く楽になりたい」
その「死んだ魚のような目」で桜を見下ろすと、
本来桃色のそれは黒く濁って見える。
目の病気とかではないけれど、
私の世界には随分前から色がない。
モノクロの古い写真みたいに、色がついていない。
きっとそれは、私が生きることを諦めているからかもしれない。
ああ、こんな世界、ぶっ壊れればいいのに……。
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