生まれ変わってもまた、何度でも恋をはじめよう。
「お前、秋山茉莉花?」
ふと後ろから声がして、
特に驚きもせずにそちらを振り向くと、男の子が立っていた。
私の通っていた高校の制服を着ている。
その子のつま先から頭のてっぺんまでじろりと見る。
一年生の頃のクラスで見かけたことのない人。
まあ、高校なんて全員を把握出来ないから、
見たことがなくても不思議じゃないけど。
「誰……?」
「そりゃ分からんわな。
お前、一年の夏までしかいなかったらしいし、
クラスメートってわけじゃなかったもんな」
軽く笑う男の子を見て、ああ、あれか……と納得した。
今度はこの人が頼まれたってわけね。
私のお見舞い係。
私は、高校一年生の夏、
病気を発症して学校で倒れた。
そのまま入院したから、あまり私を知る人はいない。
クラスにも馴染めないままだったし、
それは仕方のないことだけれど、
その後すぐに、知らない女の子が
私のお見舞いと言い毎日病室に顔を出すようになった。
どうやら担任の先生に頼まれたらしくて、
その子はベラベラと律儀に、
その日学校であったことを話していた。
一年が終わって二年になったら、
今度は別の女の子が来るようになった。
一年の時の子とは違ってオドオドした子で、
授業のノートを作って持ってきてくれていた。
それを開く気には一度もなれなかったから、
物置と化した家の自室に置いてあると思う。
その子も飽きもせずに毎日通って、ノートを持って来続けた。
それは三月まで続いていて、やがて四月になって、
そうしたらこの男の子が私の前に現れた。